予防歯科

予防歯科とは、虫歯や歯周病といったお口のトラブルが発生するのを未然に防ぎ、生涯にわたって健康な口腔環境を維持・管理していくための歯科医療です。
従来の歯科治療が、病気によって失われた機能を取り戻す「マイナスをゼロに戻す」ための治療だとすれば、予防歯科は健康な状態を維持・向上させる「ゼロをプラスに保つ」ための取り組みと言えます。

歯科先進国であるスウェーデンでは、国民の80%以上が定期的に予防歯科を受診しており、その結果、80歳時点での平均残存歯数は20本以上という驚異的な数値を誇ります。
（日本は16.4本※）。
この事実は、予防歯科がいかに歯の寿命を延ばすために効果的であるかを物語っています。
※厚生労働省「令和4年歯科疾患実態調査」より

歯は一度削ったり抜いたりしてしまうと、二度と元には戻りません。
だからこそ、くろさわ歯科では「治療」はもちろんのこと、患者様一人ひとりが生涯ご自身の歯で美味しく食事をし、笑顔で会話できる未来を守るための「予防」に最も力を入れています。
歯医者は「痛くなってから行く場所」ではなく、「健康を守るために通う場所」なのです。

虫歯や歯周病は、一度進行してしまうと削ったり抜いたりといった治療が必要になります。
しかし、予防歯科では定期的なクリーニングやチェックを行うことで、細菌の原因となる歯垢や歯石を取り除き、発症そのものを防ぐことにつながります。
「悪くなってから治す」のではなく「悪くなる前に防ぐ」ことが最大のメリットです。

一度削った歯や失った歯は二度と元に戻りません。
予防歯科で虫歯や歯周病を早期に発見・予防することで、天然の歯をできる限り長く残すことができます。
将来的に入れ歯やインプラントといった大掛かりな治療を避けられる可能性が高まり、「自分の歯で食べる」喜びを維持できます。

歯周病は糖尿病や心疾患、誤嚥性肺炎など全身の病気と深い関わりがあることが分かっています。
予防歯科でお口の中を清潔に保つことは、単に歯を守るだけでなく、全身の健康維持にもつながります。
「お口は健康の入り口」として、身体全体を守るための重要な役割を果たしています。

口臭の予防や見た目の清潔感を保てることも、予防歯科の大きなメリットです。
また、しっかり噛めることで食事を楽しめ、栄養の吸収もスムーズになります。
健康な歯と歯ぐきを維持することは、日常生活の快適さや自信につながり、生活の質（QOL）を高めることができます。

PMTCとは、歯科衛生士が専用の機器を用いて行うプロのクリーニングです。
歯磨きだけでは落としきれない歯垢や歯石、バイオフィルムを徹底的に除去します。
特に歯と歯の間や歯周ポケットなど、自分では磨きにくい部分まで清掃できるのが特徴です。

処置では、超音波スケーラーや専用のブラシ、研磨剤を使用して歯の表面をなめらかに磨き上げます。
歯面がツルツルになることで新しい歯垢や着色汚れがつきにくくなり、清潔感のある口元を保つことができます。
虫歯・歯周病の予防だけでなく、口臭改善や着色除去にも効果が期待できます。

フッ素塗布は、歯の表面にフッ素を直接塗ることで 歯の質を強化し、虫歯になりにくくする処置です。
フッ素には、酸によって溶け出した歯を修復する「再石灰化」を助ける働きがあり、初期虫歯の進行を抑える効果もあります。

当院ではPMTCでクリーニングを行った後、高濃度の医療用フッ素をジェルや液体で塗布します。
市販の歯磨き粉に含まれるフッ素より高い効果が期待でき、定期的に行うことで長期的な虫歯予防につながります。

歯磨きは毎日の基本ですが、自己流では磨き残しが生じやすく、虫歯や歯周病の原因になります。
当院では、歯科衛生士が患者さま一人ひとりのお口の状態に合わせて最適な歯磨き方法をアドバイスしています。

歯ブラシの選び方や動かし方はもちろん、フロスや歯間ブラシなどの補助清掃具の使い方まで具体的に指導します。
正しいセルフケアを身につけることで、ご自宅でも予防効果を高めることができます。

シーラントは、奥歯の溝を特殊な樹脂で埋めて虫歯を防ぐ処置です。
奥歯の溝は深くて磨きにくく、特に6歳臼歯や12歳臼歯が生え始めた時期は虫歯になりやすい部位です。

シーラントで溝を埋めることで、食べかすや細菌が入り込むのを防ぎます。
さらにフッ素を含む素材を使用するため、歯そのものを強化する効果も期待できます。
処置は短時間で終わり痛みも伴わないため、お子さまの虫歯予防に最適です。

「毎日しっかり歯磨きをしているから、クリーニングは必要ない」と思っていませんか？
実は、どんなに丁寧にセルフケアを行っていても、虫歯や歯周病のリスクをゼロにすることはできません。
その理由は、お口の中に潜む「バイオフィルム」という存在にあります。

バイオフィルムとは、細菌が自身の分泌物によって作り出す、ぬめりのある強力なバリアのことです。
キッチンの排水溝のぬめりを想像していただくと分かりやすいかもしれません。
このバイオフィルムは歯の表面に強固に付着し、内部に無数の虫歯菌や歯周病菌が棲みついています。
問題なのは、このバイオフィルムは歯ブラシの毛先が届きにくい歯と歯の間や、歯と歯茎の境目に形成されやすく、一度形成されてしまうとご自身の歯磨きだけで完全に取り除くことは極めて困難である点です。

バイオフィルムを放置すると、内部の細菌が酸を出し、歯の表面を溶かして虫歯を引き起こします。
また、歯茎に炎症を起こし、歯を支える骨を溶かしてしまう歯周病の原因にもなります。
さらに、唾液中のミネラルと結びついて石灰化し、硬い「歯石」へと変化します。
歯石の表面はザラザラしており、さらにバイオフィルムが付着しやすくなるという悪循環を生み出します。
歯石は歯ブラシでは絶対に除去できません。
セルフケアで日々の汚れを落とすことは非常に重要ですが、それだけでは限界があります。
定期的に歯科医院で専門的なクリーニングを受け、セルフケアでは取り除けないバイオフィルムや歯石を徹底的に除去することこそが、お口の健康を守るための鍵となります。

予防処置は1回で完結するものではありません。
3〜4ヶ月に1度の定期的なメンテナンスを続けることで、虫歯や歯周病の予防効果を維持できます。

歯科医院でのケアだけでなく、毎日の正しい歯磨きやフロスの使用が予防の基本です。
生活習慣も含めたセルフケアを意識することで効果が高まります。

PMTCやスケーリングのあと、一時的に歯がしみたり歯ぐきに違和感が出たりすることがありますが、通常は数日で治まります。
気になる症状が続く場合はご相談ください。

フッ素塗布や使用する薬剤について不安がある方は、必ず事前にお知らせください。
安全に配慮したケア方法をご提案いたします。

毎食後の歯磨きが基本です。
歯と歯ぐきの境目や奥歯の噛み合わせ部分は汚れが残りやすいため、時間をかけて丁寧に磨きましょう。

歯ブラシでは届きにくい歯と歯の間には、デンタルフロスや歯間ブラシを取り入れることが効果的です。
虫歯や歯周病のリスクを大きく減らせます。

フッ素には歯を強くし、初期虫歯の進行を抑える働きがあります。
毎日の歯磨きにフッ素入り歯磨き粉を使うことで、より高い予防効果が期待できます。

甘い物のだらだら食べや喫煙習慣は、虫歯や歯周病を悪化させる原因です。
バランスの取れた食事、十分な睡眠、適度な運動を心がけることもお口の健康につながります。